トレーラーでのバック運転術!車庫入れのコツと練習法にも迫る!!
公開 : 2017/07/12更新 : 2022/03/10
みなさん、こんにちは! トラック王国の展示場スタッフ、全国 展子(ぜんこく てんこ)と申します!
トレーラーでバックするときの車庫入れ運転術と練習法、注意点をモータージャーナリストで運転インストラクター経験も豊富な近田茂さんに動画付きで解説いただきました!けん引免許の実技教習でも「トレーラーは操作が難しい」と言われていますが、それは基礎を知らないだけかもしれませんよ?
■執筆:モータージャーナリスト近田 茂(ちかた しげる)
オートバイ雑誌『モト・ライダー(三栄書房)』創刊スタッフを務めた後、フリーランスに転身。2輪4輪の垣根を持たず、トラック、牽引、大型バスまで幅広く執筆中。安全運転講習のインストラクター経験も豊富。
■編集:トラック王国ジャーナル編集長 まえだえり
伝説のギャル誌『egg』やカルチャー誌『別冊BUBKA』の編集者を経て、『トラック王国』へ入社。『トラック王国ジャーナル』立ち上げに奔走した結果、2017年 編集長に就任。
目次
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トレーラーバックの基礎ポイント
「トレーラーでバックしながら車庫入れするのは難しいですか?」と聞かれたら、ハッキリ言って「難しい」の一言です! ただし、「それは未経験の人がほとんどだからこそ」という条件つきの回答です。
例えば普通のクルマでも、縦列駐車が苦手な人はとても多いです。
教習所で教えられた以後、実際に縦列駐車をする場面に遭遇し、習ったテクニックを駆使してそれをマスターするチャンスに恵まれる人はそう多くはないからです。
僕からすれば、運転は〝習うより慣れろ〟という意識が肝心です。
ある程度の経験(練習)を積めば、誰でも一通りの技術はマスターできます。
ただし! 〝一般的なクルマの運転〟とは決定的に異なる基礎的な2つのポイントがあります。
下記の車両業界用語で言葉の意味をチェックしたら、その下に記載したトレーラーバック2つの基礎ポイントを覚えてください。
■車両業界用語
本記事では、下記の用語を使って解説します。
- ハンドルを切る
- トラクターの前輪(舵)を操作することを意味しています。ちなみに、正式な表現は「ステアリングを切る」です。
- 折れる(折れ角)
- 上空から車両を見たとき、トラクターとトレーラーの連結部が〝くの字〟、あるいは〝逆くの字〟状に折れ曲がることを指して使います。また、その折れた角度のことを「折れ角」と表現します。
- 伸ばす(伸びる)
- トラクターとトレーラーが整列して、真っ直ぐに戻る様子を指した表現です。
■トレーラーバック2つの基礎ポイント(ここ大事なとこです!)
一般的なクルマとは異なる部分です。必ず、理屈として覚えておきましょう!
- 1:自然な直進バックは無理!トレーラーは必ず左右どちらかに折れる!!
- 普通のクルマならハンドルを動かさず、真っ直ぐな舵で後退すれば、定規で線を引くように直進バックできます。
しかしトレーラーの場合は必ずどちらかに折れてくるため、それを修正し続ける必要があります。 - 2:向きを調整するときは、トラクター全体をクルマの前輪とイメージせよ!
- 左右に折れようとするトレーラーの角度を伸ばし続ければ、トレーラーでも直進バックができます。
トレーラーの場合、トラクター全体をクルマの前輪であるとイメージして左右の向きを整えてください。折れをいち早く察知して、伸ばすようにハンドルを切ることが重要です。
トレーラーバックのコツ[車庫入れ・左右の違い・対処法]
それでは、実際にトレーラーでのバック技術を用いた車庫入れ方法や、困ったときの対処法を解説していきましょう!
バックで車庫入れするとき
ココでは進行方向に対して左手にある車庫スペースに、バックで入るシーンを想定してお話します。
上述した基本ポイントを踏まえて、次の解説動画をご覧ください!
さらに、ココからは画像を交えて、手順を補足解説していきます。
車両の長さや進入路の幅、アプローチの位置によっても操作具合の目安は異なりますが、操作の基本は共通です。
手順1.スペース全体の安全確認
まずは、車庫の前を通過してスペース全体の安全確認を行ってください。
邪魔物(者)はないか、角や側面、天井に突起などの干渉物がないかをジックリとチェックしましょう。
隣の車両や壁面、あるいは駐車スペースの範囲指定ペイントがあるなら、それらを基準にして自分のトレーラーが無理なく入るかどうかを判断してください。
手順2.車庫スペースの入り口過ぎで停止
トレーラーの最後軸が車庫スペースの入り口を過ぎたあたりで、車両を停めてください。 周囲の状況が把握しやすいように窓を全開にして、いよいよ車庫入れです。
手順3.ハンドルを右切りでバックを開始
普通のクルマならハンドルを左に切ってバックを始めれば良いですが、トレーラーはトラクターを左向き(くの字)にする必要があるため、ハンドルは右切りでバックを開始してください。
手順4.トレーラーが“くの字”に折れたら、ハンドルを真っ直ぐに戻す
右切りでバックしてトレーラー全体を前方から後ろ向きに俯瞰すると、“くの字”に折れながら、トレーラーの後部が車庫スペースに入って行きます。
そのまま続けるとどんどん折れてくるので、右切りでスタートしたハンドルはいったん真っ直ぐに戻し、折れていく角度に合わせて調整していきましょう。
(慣れてくれば、手順4は省略して次の操作へと進んでください)
手順5.トレーラーの折れ角を一定に保って、微速後退する
普通のクルマでも、ハンドルを切ったままでバックを続ける区間がありますが、それと同様にトレーラーも折れ角を一定に保ちつつバックを続けたいところです。
ハンドルを左に切って、微速後退しながら角度を調節していきましょう。
タイヤの傾きを表す操舵角(そうだかく)が折れ角よりも大きければトレーラーは伸びてくるし、小さければ折れてくるので、その中間点を探って、ベストな折れ角をキープします。
手順6.トレーラーが伸びなければ、いったん前進して切り返し修正
最大操舵角よりも折れ角が大きい場合は、バックしながらトレーラーを伸ばすことが不可能な場合もあります。
そんな時は、いったん前進していわゆる切り返し修正をしてください。
1番最初は後部左角、2番目に後部右角、そして3番目はフロント右側への膨らみに注意して行います。死角になっている部分は、いったん降車して確認しましょう。
トレーラーの場合、進入路の左側車線をアプローチしても、トラクターは反対車線まで大きくはみ出すように膨らむので、トラクター右側面を確認しながら切り返してください。
手順7.車庫スペースの後端までトレーラーを着けて、完了!
普通のクルマなら車庫スペースに対して車体が平行になったら、ハンドルを真っ直ぐに戻して後端まで直進バックすれば完了します。
しかしトレーラーの場合は、停車状態でハンドルを切る据え切りに相当する操作ができません。
したがって、車庫スペースに対してトレーラーが平行になるようバックしつつ、トラクターも伸びるように仕上げます。
(実はこれが一番の難関!)
車庫の後端に行き着くまでのバックで、トラクターも整列させるのが理想形です。
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実務では、トラクターよりもトレーラーが平行に入ることを優先して車庫入れしても問題ないでしょう
左バックでも右バックでも、基本は同じ
トレーラーでの車庫入れ運転法を話すと、「車庫スペースの都合で、左右逆からバックする場合は、どうするのですか?」という質問をいただくときがあります。
しかし、操作手順が上記解説の逆になるだけで技術的な操作方法に変わりはありません。
困ったら、いったん前進する
折れ角が大き過ぎた時や小さ過ぎてトレーラーが車庫に入らないとき、またバックできるスペースが残り少ないときは、いったん前進して車庫スペースへの進入状況を改めましょう。
上述した解説例で例えると、ハンドルを右へ切って前進すれば折れ角を調整して伸ばすことができます。
不安な人は、バックカメラ&モニターを設置する
慣れないうちは、トレーラーの後端にバックカメラを設置する方法も有効です。
モニターを運転席に取り付ければ、最後端周辺の確認がカンタンになります。
最近は、連結ケーブルでカメラとモニターを結ばなくても、ワイヤレスで無線接続できる高性能な製品が増えています。
トレーラーバックの3大練習方法[練習場・助手席・アプリ]
理屈と手順を覚えたら、次は練習あるのみ!
効果的な3つの練習方法を有効と思われる順に、解説していきます。
練習法1:練習場でバックを試す
地域の自動車練習所やデポ(物流施設)など、とにかく広いスペースで動かしてみましょう。
前進時のフル操舵でどのくらいの内輪差が生じるのかをチェックしてください。
「バックするとトレーラーがどのように折れていくのか」「どうすれば伸びるのか」を身体の感覚でマスターしましょう。
具体的には、下記の3ステップで練習するとスムーズに上達します。
ステップ1
練習は直進バックからはじめましょう。
くの字になったらハンドルを左に切ることでトレーラーは伸びます。
逆くの字なら右に切ってください。
オーバーに表現すれば、トラクターがスネークのように蛇行しながら直進を保つイメージですが、慣れると素早く小さな修正で直進を維持できるようになります。
ステップ2
直進バックのコツがわかれば、次は積極的に折っていきましょう。
大きな折れ角から伸ばす操作をして、伸び切るのに必要な距離や適切なハンドル操作を覚えてください。
ステップ3
そして最後のステップは、ステップ1と2の動きをもとに予行練習することです。
運行形態にならった車庫入れ等、実践現場に当てはめた練習を重ねましょう。
練習法2:ベテランドライバーの運転を助手席で見る
運転の上手なドライバーの助手席に乗って、実際の運行現場を目の当たりにしながら覚えていく方法もオススメです。
トラクターとトレーラーが自分の担当サイズと同じ組み合わせなら、とても良い参考になることは間違いありません。
【関連記事】セミトレーラーの規格・寸法
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練習法3:アプリ・ゲーム・ラジコンなどを活用する
厳密に言うとそれぞれのツールに独特なノウハウが介在するので、ベストな方法とは言えませんが、アプリ、ゲーム、ラジコンでの練習も有効です。
筆者・近田も試してみましたが、想像以上にリアルな動きを疑似体験できました。
運転の基本は同じだから、遊びで操縦を楽しんでいるうちに上手くなるキッカケはつかめるかもしれません。
トレーラーバック2つの注意点
それでは、ココまでのおさらいの意味もこめて、トレーラーでバックするときの注意点を2つあげておきます。
注意点1:後方の死角に注意!
トラクターのバックミラーは、ワイドな鏡面で広範囲の視野を確保するように見えますが、意外とせまい範囲しか映し出されないという難点があります。
しかも車両全体は大型トラックよりもさらに長い場合が多いため、後方は見えにくい構造。
さらに、トレーラーが折れると完全な死角になるケースもあるので、常に細心の注意を払いましょう!
注意点2:運転席の窓は全開に!
前述した通り、運転席の窓を全開にしてからバックするのが基本です。
少しでも不安があるなら、いったん停車して運転席から降り、目視で確認するぐらいの慎重な運転が大切です。
リヤウインドウから直視可能なトレーラーである場合は、そこからの情報もフル活用しましょう。
牽引(けん引)免許の合格必勝法[一発試験・教習所]
さて、ココからはオマケ情報。これを読んでいる方は、これからけん引免許にチャレンジする方も多いでしょう。
そんな方のために、『一発試験』と『教習所』の合格ポイントの違いをお話します。
一発試験
教習所に通わず、試験場でいきなり免許試験を受ける方法です。
上手くいけば、免許取得に必要な経費と時間が節約できるため、運転感覚に自信のある方にはオススメです。
合格率は82.3%
(参照:警察庁『運転免許統計』)。
1回目は練習のつもりで行って全体の雰囲気や試験コースを把握し、2回目から本番として挑むのが合格のコツです。
鬼門となる方向変換(車庫入れ)は1回で成功させる事にこだわるよりは、切り返しも含めてスムーズに扱える方が好印象です。
〝トレーラーの基本的な扱い方が理解できている〟と、試験官に判断されれば(トータルの減点が少なければ)合格!
ちなみに、けん引二種免許は、けん引免許よりもさらに厳しく、車両感覚と扱い方を極めたスムーズな走行に徹することが求められます。
教習所
教習所通いは、免許試験で合格できる運転ノウハウを教わりながら、効率良くスキルを向上できます。
講習後の免許試験は、試験場で行うケースと、教習所を卒業することで技能試験免除になるケースがあります。
あくまで目安ではありますが、一発試験で5回以上失敗した方は、教習所で講習を受ける方法に切り替えても良いでしょう。
【関連記事】けん引免許の種類や、トレーラー運転手の求人事情
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トレーラーバック運転術まとめ
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展子もけん引免許は、バックで苦労した覚えがあります
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展子センセは、いろんな免許を持っていてすごいトラ!
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多くの免許を取得していると、いろんなお客さまのキモチが想像できるから、接客に役立つのですよ
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さすがは展示場スタッフの鏡! これで『トラック王国』も安泰じゃ!!
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