トラックのエアブレーキの踏み方・操作方法のコツと注意点は?
公開 : 2024/01/24更新 : 2024/06/11
みなさん、こんにちは! トラック王国の展示場スタッフ、全国 展子(ぜんこく てんこ)と申します!
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トラックのブレーキシステムの仕組み
トラックは荷物を積むと、ブレーキングの時に大きな制動力を必要とします。普通乗用車が1tだとするとトラックが4t分・約4倍の力でブレーキがかからないと止まらないことになります。その大きな力をどうやって発生させているのでしょう。ここでそのブレーキの種類と秘密を調べてみました。
ブレーキは車輪に摩擦を発生させる直接的な方法と、エンジンやギアを使い間接的にブレーキをかける仕組みに分かれます。フットブレーキは運転席のペダルを踏み、回転しているディスクやドラムに直接作用する摩擦力を利用したブレーキの種類です。
●フットブレーキの種類と特徴
・ディスクブレーキ・・・回転しているディスクローターをディスクキャリパーの中のブレーキパッドが挟んで摩擦力を発生させる
メリット・・・放熱性が高い、安定した制動力、水はけがよい、掃除が楽
デメリット・・・コストが高い、パッドが常に接触
・ドラムブレーキ・・・回転しているドラムを内側からシリンダーの力でブレーキパッドを内部より押し当て摩擦力を発生させる
メリット・・・コストが安い、制動力が強い、引きずりが小さい、ブレーキパッドが大きい
デメリット・・・熱がこもりやすい、水が抜けにくい
ディスクブレーキを搭載しているのは主に小型トラックです。中にはキャリパーを2個つけたダブルキャリパーで制動力を高めているタイプもあります。ボルボの子会社であるUDトラックスのブレーキは、高速走行が多い欧州車のディスクブレーキ採用にならって総輪ディスクブレーキを搭載しています。
ドラムブレーキは中型、大型に搭載されていますがディスクブレーキと併用しているタイプもあります。三菱ふそうはドラムブレーキからディスクブレーキに変えた時期がありましたが、やはりコスト面がネックでドラムブレーキに戻した経緯があります。
また、これらのフットブレーキは、以下の仕組みで可動します。
■フットブレーキを動かす仕組み
・油圧ブレーキ・・・ペダルの踏力をブレーキブースター(倍力装置)の油圧で倍増させるシステム。
・エアブレーキ・・・ペダルの踏力をエアコンプレッサーの圧縮空気を利用して倍増させるシステム。
その他のブレーキ
①リターダー(補助ブレーキ)・・・エアブレーキの制動力アシスト。減速を目的にしたもの。
②排気ブレーキ(エキゾーストブレーキ)・・・排気バルブに負荷を加え、シリンダー内に排気抵抗を発生させることでエンジンの回転数を制御。制動力はエンジンブレーキの約1.8倍。減速装置として車両総重量3.5t以上のトラックに装備。準中型免許以上が対象。
③圧縮開放式ブレーキ(ジェイクブレーキ)・・・シリンダー内の圧縮空気を抜く。シリンダー別に作動も可。いすゞ【エンジンリターダー】三菱ふそう【パワータード】など、排ガス規制や低燃費が掲げられてからは搭載車減。
④エンジンリターダー・・・排気ブレーキと対を成す。排気圧力は一定のラインを超えると、逆にエンジンの回転数が上がる傾向がある。上がり過ぎた排気圧を調整。スイッチや手動レバーでオン。アクセルかクラッチを踏むことでキャンセル。
⑤リターダー・・・大型トラックの原則専用装置。プロペラシャフトの回転力を抑制。トランスミッションの後部に設置、永久磁石式は小さくて軽く「過電流」を発生させる。その他磁石式や作動油がある。
⑥パーキングブレーキ・・・1992年の中期ブレーキ規制によりワイヤー式からホイールパーク式に変更。空気圧を抜くことで、強力なスプリングが作用。パーキングブレーキがかかる。
⑦エンジンブレーキ・・・ギアを入れたままで、アクセルから足を離す。もしくはシフトダウンでギア比を利用し、エンジンの燃料供給をストップすると車重で負荷がかかり徐々に速度が遅くなる。
トラックのエアブレーキの踏み方のコツ
エアブレーキは一般乗用車に搭載されている油圧式ブレーキと操作方法が全く異なります。そんなエアブレーキの踏み方のコツをご紹介します。
かかと(踵)を支点に
トラックのブレーキペダルは乗用車の吊り下げ式と違って、オルガン式と言われているタイプです。横から見るとペダルを下から支える形になっています。ペダルの下にかかとを付けると、自然に足裏全体がペダルにピッタリ沿うような形になります。そこでかかとを支点にして、ゆっくりと足を倒してゆきます。踏むというより、ペダルを倒すといった感覚に似ています。
細かい踏み込みでエア消費も少なく、十分な制動力が得られます。レスポンスの感覚が乗用車と違うので、反対に大きく踏み込むと急ブレーキをかけたようになりエア消費も大きくなります。
積み荷の状態を把握
積む荷物の量に合わせて踏み込み加減を調整。積み荷が多いとブレーキのかかりが遅かったり、利きが悪かったりします。それはスピードに乗った状態を推進力がキープしようとする力と、ブレーキで止めようとする力が比例して大きくなるからです。その状態で慌ててブレーキをかけると、大きな制動力が一気に働くので荷崩れを起こす原因になります。今トラックがどのような状態か、しっかり把握してハンドルを握りましょう。
トラックのエアブレーキ利用時の注意点
エアブレーキを使用するときには、注意しなければならない点がいくつかあります。以下にまとめてみました。
ばた踏みNG
トラックでいうばた踏みとは、ポンピングブレーキの事を指します。何度も何度も必要以上にブレーキをかけるとエアコンプレッサーの空気が減ってしまいます。また当たり前ですがタイヤも減ってしまいます。タイヤは新品の方がグリップ性も高く、制動力も上がります。タイヤのすり減りは、ブレーキの掛け過ぎによって大きく変わります。注意しましょう。
エアブレーキ多用NG
エアブレーキをたくさん使うと、エアが無くなりブレーキが利かなくなります。他の排気(エキゾースト)ブレーキ圧縮開放ブレーキやエンジンブレーキ、リターダーを併用して、タイミングに合ったブレーキを使用しましょう。警告音が鳴ったら、エアコンプレッサーのエアが十分でないことを指しています。その時は、トラックを安全な場所に停めてアイドリングしながらエアコンプレッサーに空気が蓄積されるのを待ちましょう。
スピード出し過ぎNG
スピードを出すと、それだけブレーキングに大きな制動力を必要とします。仮に止まったとしてもブレーキ周りの部品温度が上昇して、ブレーキの利きが悪くなるケースがあります。90キロのリミッターがついていても、十分な車間距離と余裕のある運転でスピードの出し過ぎには注意しましょう。
コネクト技術を利用する
オートクルーズコントロースやオートパイロットのような、自動運転は先読みが出来るタイプがあります。GPSとも連動できますが、一度走行した道路を記憶してデータ化し登坂車線の前にはシフトアップ抑制、頂上付近では慣性走行などブレーキングの前に速度を上手くコントロールしてくれます。
日野自動車のICTサービスは通信システムで車両の情報を共有し、予防整備や省燃費に繋がる運転サポートもしてくれます。そのシステムの一環でAI、が実用に沿ったルート検索を表示するなどエアブレーキに頼らない運転をアシストしてくれます。こういった技術を取り入れたトラックが、中古車市場に出回るのも時間の問題でしょう。
エア残量を確認する
エアコンプレッサーの圧縮空気は、エアブレーキだけに使用するとは限りません。クラクションを鳴らすのはもちろん圧縮空気ですが、そのほかにパーキングブレーキ、トランスミッション、クラッチ、サスペンション等に使用されます。いきなりエアブレーキが使えなくなる前に、乗車前点検ではエア残量が十分がどうかもチェックしましょう。
利きが悪い・故障かな?と思ったら
ブレーキの利きはエアブレーキだけに限ったことではありません。トータルで色々なケースが考えられます。事故にも直結する可能性もあるので、利きが悪いと感じたり、故障を疑ったりする前に次に挙げる部分も考慮してみましょう。
・フェード・・・ブレーキの摩擦材(ブレーキパッド、ブレーキシュー、ライニング)から熱でガスが発生。そのガスの油膜で摩擦力が低下する現象。
・ペーパーロック・・・ブレーキオイル(液)が沸騰し、シリンダー内に気泡が発生。気泡がクッションとなり踏力の圧が倍増しない。
・ABS・・・ABS(アンチロックブレーキシステム)が作動してタイヤがロックされます。ABS作動で排気ブレーキが解除されるタイプでなければ、ポンと軽くアクセルかクラッチを踏むとロック解除になります。ベテランドライバーのような経験がないと解除に時間がかかるかもしれません。雪で滑ったときは、素早くABSを解除しなければ制動距離が長くなってしまう事があります。
・タイヤの空気圧・・・新しいタイヤは乾燥路面に強いドライ性能や、濡れた路面に性能を発揮するウェット性能の高いものがあります。これらを頻繁に新しいものに交換するのは、コスト面で負担がかかりますが空気圧のチェックも甘く見てはいけません。そのタイヤに決められた空気圧の数字がありますが、そのタイヤの最大負荷能力(ロードインデックス)に合った数値になっています。
例えばロードインデックスが88の場合、空気圧220kpaだと支える重量が505kgとなっています。空気圧を230kpaにすると525kgまで支える重量が増えます。だからといって内圧を上げると、逆にタイヤのゴムが膨張しグリップ性も低下しバーストの危険性もあります。
・DPFの再生・・・ディーゼルエンジン特有のスス焼きです。排気ブレーキの利きが悪くなると、ススがたまってきたケースも考えられます。ススが邪魔をしてバタフライバルブが閉じなくなるのが原因です。警告灯が点灯したら、DPFのスイッチを入れてスス焼きをしましょう。だからといって何かをするわけではありません。スイッチをオンにすることで、バルブを閉じ内部を高温にすることでスス焼きになります。排気ガスが高温になるので、周りに燃えやすいものがないか確認してからスイッチを入れましょう。
エアブレーキおすすめの踏み方
エアブレーキの踏み方に気を付けるだけで、安全面や省燃費に差がつくことがお分かりいただけたでしょうか。他のブレーキも併用してエアブレーキだけに頼るのは避けましょう。電子制御で、ブレーキの組み合わせを自動でできるトラックもあります。リターダー+排気ブレーキ+摩擦ブレーキというように、トラックを運転しながらベストな状態ブレーキを使用しましょう。
運転中の安全確認は、視認が大切です。セミオートマの様にMTよりも、運転中の操作が少ないトラックが増えてきました。目視確認に気を配りながら、スピードの出し過ぎにならないようエアブレーキを上手く使って省燃費走行をしてみてはいかがでしょうか。
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