高所作業車の資格・免許ガイド!技能講習と特別教育のちがいは? 車種・価格・事故予防策にも迫る!!
公開 : 2018/02/02更新 : 2022/03/10
みなさん、こんにちは! トラック王国の展示場スタッフ、全国 展子(ぜんこく てんこ)と申します!
今回は、高所作業車の特集です。技能講習や特別教育といった資格・運転免許事情から高所作業車の種類と構造、新車・中古・レンタルの価格事情まで迫ります。安全に作業するための事故予防策もまとめたので、最後までお見逃しなく。取材協力・監修は、『アイチ研修センター』さんです!
■取材協力・監修:アイチ研修センター
高所作業車の運転資格取得をサポートする教育研修所であり、架装メーカーとして有名な『アイチコーポレーション』の関連会社。本社と併設する埼玉県上尾教習所を中心に全国7教習所で展開中。
受講のご予約はコチラの公式HPから。
■執筆:モータージャーナリスト近田 茂(ちかた しげる)
オートバイ雑誌『モト・ライダー(三栄書房)』創刊スタッフを務めた後、フリーランスに転身。2輪4輪の垣根を持たず、トラック、牽引、大型バスまで幅広く執筆中。安全運転講習のインストラクター経験も豊富。
■編集:トラック王国ジャーナル編集長 前田絵理(まえだえり)
伝説のギャル誌『egg』やカルチャー誌『別冊BUBKA』の編集者を経て、『トラック王国』へ入社。『トラック王国ジャーナル』立ち上げに奔走した結果、2017年 編集長に就任。人生の目標は-5kgの万年ダイエッター。
目次
剪定用から電工・橋梁点検仕様まで。高所作業車が格安!
■高所作業車とは?
こんにちは、モータージャーナリストの近田です。
今回は、造園・石材業界や電気・電話業者、建設会社の方がよく活用する高所作業車にスポットライトをあてましょう。
高所作業車とは、大きなカゴ状の装置に人が乗って、高い所で作業するための乗り物です。
▲混合ブームを架装した高所作業車の一例
今回はそんな高所作業車の種類や資格の最新事情を知るべく、埼玉県は上尾市の『アイチ研修センター』本社を訪ねてきました。
機能性に優れたスカイマスターシリーズの高所作業車でトップセールスを誇る、『株式会社アイチコーポレーション』の関連会社としても有名ですね。
▲写真左から筆者(近田)・『アイチ研修センター』原澤課長・白川係長・森所長・担当編集者(前田)
教習車:SH15B アイチコーポーレーション製
高所作業車は、1965年に電線工事の感電事故から作業員を守る目的等で開発されて以来ずっと、高所における工事、点検、補修作業の現場などで大活躍しています。
例えば、電気工事・通信ケーブルの敷設作業や住宅への引き込み作業、電柱・電線(通信線)の工事。また、道路標識や看板の設置、樹木の剪定など、いずれも地上6m〜10m前後の高所作業で使われます。
筆者の担当編集者である前田も高所作業車に試乗し、地上高8mでの作業に挑戦しましたが、恐怖で手が震えていました。
▲実際の資格講習と同じく、 高所に設置されたロープにクリップをはさむ前田
(指導オペレーターさんと同乗)
▲高所作業車のバスケットから撮影した1枚。
地上高17.1mの世界は風も強い!
このとおり特殊車両ではありますが、意外といろんな場所に出没しています。
見たことのある方も多いのではないでしょうか?
▲こちらは樹木の剪定作業現場。
全国で行われている風景です
■高所作業車の資格と免許[技能講習・特別教育]
高所での作業は危険が伴うだけに、高所作業車を扱うには専門の資格や免許が必要です。
大きくは技能講習と特別教育の2つに分かれ、作業床の高さによって分類されています。
高所作業車の運転に必要な資格
それでは、技能講習と特別教育を順に解説していきましょう。
1.技能講習
技能講習は、作業床の高さが10m以上に及ぶ全ての作業車を扱うことができます。(もちろん10m未満も取り扱い可)
実際、就職等で有利になる資格は特別教育ではなく技能講習でしょう。
技能講習の講習科目・時間
- 学科 計11時間(試験時間を除く)
- ・高所作業車の作業に関する装置の構造及び取扱いの方法に関する知識:5時間
- ・原動機に関する知識:3時間
- ・高所作業車の運転に必要な一般的事項に関する知識:2時間
- ・関係法令:1時間
- ・学科試験
- 実技 計6時間(試験時間を除く)
- ・高所作業車の作業のための装置の操作:6時間
- ・実技試験
- ※現在の所持資格・免許によって、講習科目の一部は免除
技能講習の受講費用・受講資格
- 受講費用
- 36,850円~44,850円
※参考:アイチ研修センター上尾教習所 - 受講資格
- 満18歳以上
受講者は個人だけでなく、企業単位あるいは専門学校生。まとまって受講される方も多く、条件によっては助成金制度の対象となります。
(建設労働者確保育成助成金制度:くわしくは各都道府県労働局または、最寄りのハローワークへお問い合わせください)
マジメに受講すれば取得できる資格ですが、不合格の例もゼロではありません。
ただし、その場合は補講が用意されており、結果的には受講者のほとんどが修了証を受け取れます!
※技能講習修了者の資格者証
画像提供:アイチ研修センター
この技能者講習の資格者証は、正式名称を「労働安全衛生法による技能講習修了証」と言います。
各自治体が置く労働局長登録教習機関が講習を代行するもので、今回『トラック王国ジャーナル』の取材に応じてくれた『アイチ研修センター』もそのひとつ。
余談ながら同社の研修規模や講習設備は一流です。
研修センターで得られる情報や気付きは、『アイチコーポレーション』の高所作業車開発にも反映されていると聞き、ブランドへの信頼度もさらに上がった筆者です。
2.特別教育
作業床の高さが10m未満の高所作業車を扱うときは、特別教育の修了が必要となります。
特別教育の講習科目・時間
- 学科(計6時間)
- ・高所作業車の作業に関する装置の構造及び取扱いの方法に関する知識:3時間
- ・原動機に関する知識:1時間
- ・高所作業車の運転に必要な一般的事項に関する知識:1時間
- ・関係法令:1時間
- 実技(計3時間)
- ・高所作業車の作業のための装置の操作:3時間
- ※現在の所持資格・免許によって、講習科目の一部は省略
特別教育の受講費用・受講資格
- 受講費用
- 16,340円
※参考:アイチ研修センター上尾教習所 - 受講資格
- 満18歳以上
先述した通り、就職には技能講習の方が有利なものの、地上高10m未満の現場が多ければ特別教育でも問題ないでしょう。
ただ、作業中の高さが地上から10m未満だったとしても、10m以上まで上昇できる作業床を搭載した高所作業車の操作には、技能講習修了証が必要なのでご注意を!
3.講習が一部免除(省略)となる資格・免許
技能講習・特別教育ともに、下記の資格所持者は講習が一部免除(省略)になります。
それに伴い受講費用も安くなるので、申し込み時に教習所や研修センターへ問い合わせておきましょう!
免除(省略)対象の資格・免許一覧
- 普通自動車免許
- 準中型自動車免許
- 中型自動車免許
- 大型自動車免許
- 大型特殊自動車免許
- 移動式クレーン運転士免許
- 小型移動式クレーン運転技能講習
- フォークリフト運転技能講習
- ショベルローダー等運転技能講習
- 車両系建設機械運転技能講習
なお、工場内で使う自走式高所作業車はともかく、トラック式高所作業車は各種操作資格のほかに車両サイズに合う運転免許が必要です。
■高所作業車の種類と構造[走行装置・作業装置]
高所作業車には、3種の走行装置と4種の作業装置があります。
走行装置とは、その名のとおり車両を移動させる仕組みのこと。作業装置は、作業床を昇降させるための装置を指しています。
走行装置は3種類
高所作業車を走行させる装置には、トラック式・ホイール式・クローラ式があります。
1.トラック式
いわゆる貨物トラックの上に作業装置を架装したタイプをトラック式高所作業車といいます。
作業現場まで公道を走って自由に移動できるわけですから、利便性が高く最もポピュラーなタイプ。
トラックシャシーに、高所作業のための装置を後付けして完成させます。
こんな現場でオススメ!
- ・作業場所が公道(作業は道路使用許可を得てから!)
- ・工期が短い
- ・短時間で作業、点検をする必要がある
- ・樹木などの剪定現場
- ・看板取り付けの作業現場
- ・街路灯、信号機の保守作業現場
2.ホイール式
車輪のついた専用台車に作業装置を取り付けたタイプが、ホイール式高所作業車です。
公道を走れないので作業現場は限られてしまいますが、現場の範囲内をゆっくり移動しながら作業するには効率的です。
ホイールは路面も傷つきにくいので、建物内の移動にも良いでしょう。
こんな現場でオススメ!
- ・造船所など、公道以外の現場
- ・倉庫内など、工場施設内の保守点検
- ・建設工事の仕上げ
3.クローラ式
ホイールの代わりにクローラを備えたタイプが、クローラ式高所作業車です。
凸凹の多い土地や、軟らかい地盤での走行が可能です。
ホイール式と同様、作業範囲内をゆっくり移動させることもできます。
こんな現場でオススメ!
- ・地盤が凸凹もしくは軟弱(作業は水平堅土上で行う)
- ・建物内の設備工事の仕上げ
作業装置は4種類
大きくはブームタイプと昇降タイプの2つですが、細かく分けると伸縮ブーム型・屈折ブーム型・混合ブーム型・垂直昇降型の4種類の作業装置があります。
1.伸縮ブーム型
作業床を取り付けるブームがアンテナのように伸縮するタイプを伸縮ブーム型といいます。
業界問わずいろんな現場で活用できるため、最も普及率の高い作業装置です。
こんなメリットがあります!
- ・ブームが直線に伸びるから、作業床の位置を決めやすい
- ・広大な場所での作業性が高い
2.屈折ブーム型
ブームが折れ曲がるタイプを屈折ブーム型といいます。
作業現場の状況によって、障害物をかわしながら作業床を移動できることが特徴です。
こんなメリットがあります!
- ・ブームを屈折することで、現場の奥深くまで作業床を侵入させられる
- ・障害物をかわしながら作業できる
3.混合ブーム型
伸縮ブームと屈折ブームの両機能を備えたタイプを混合ブーム型といいます。
現場が広範囲なときに活躍し、トラックに架装されていることも多い作業装置です。
こんなメリットがあります!
- ・作業床の移動可能範囲が広くて高い
- ・建設工事や保守管理作業の現場で便利
4.垂直昇降型
作業床を垂直に上下させるタイプを垂直昇降型といいます。
小さな高所作業車なので、倉庫や建設現場の内装工事などで活躍します。
こんなメリットがあります!
- ・小さな高所作業車との相性が良い
- ・建設現場の内装工事など、狭小現場で役立つ
■高所作業車の人気車種カタログ[中古]
さて、実物の高所作業車にはどんなものがあるのでしょうか?
普及率の高いトラック式高所作業車をいくつかご紹介します。
今回は『トラック王国』取り扱い車両から、特に需要の多い小型タイプを厳選しました。
小型といえど作業床の地上高は10-15m以上という車両もあり、様々な現場で活躍させることができます!
1.いすゞ『エルフ』
エルフ(小型高所作業車)
- 架装メーカー・型式
- アイチコーポレーション・TZ20A(同年式)
- 作業床の最大の高さ
- 19.7m
- 作業装置の種類
- 伸縮ブーム型
- 作業床の積載荷重
- 1,000kg
高さ19.7mのTZシリーズ!
大型の作業床で効率アップ間違いなし!!
こちらは、『アイチコーポレーション』の架装を乗せた6速MT車。
機材や資材を積んだまま作業できるTZシリーズで、19.7mの高さまで上昇します。
ブームを上げたまま作業床を360度回転させる機能も備えているため、現場の効率アップが図れます。
2.日野『デュトロ』電工仕様
デュトロ(小型高所作業車)
- 架装メーカー・型式
- アイチコーポレーション・SH106(同年式)
- 作業床の最大の高さ
- 10.6m
- 作業装置の種類
- 伸縮ブーム型
- 作業床の積載荷重
- 100kg
絶縁ブーム&絶縁バケット!
ジャッキベース付きの電工仕様車!!
こちらは4.9Lディーゼルエンジン搭載の5速MT車です。
電気・通信系の工事にピッタリの絶縁ブーム、絶縁バケットを搭載。
ジャッキベース(敷板)も付属されているので、作業時の安定性もバッチリです。
3.マツダ『タイタン』電工仕様
タイタン(小型高所作業車)
- 架装メーカー・型式
- 新明和工業・APM099-52F(同年式)
- 作業床の最大の高さ
- 9.9m
- 作業装置の種類
- 伸縮ブーム型
- 作業床の積載荷重
- 200kg
高所連続作業ができるスカイムーバー搭載!
効率重視派にオススメ!!
こちらは、中古市場でも希少価値の高い超人気のスカイムーバーを搭載。
作業者がバケットに乗っている状態で車両を移動させられるのです。
高所での連続作業が叶うので、効率はものすごく上がるでしょう。
電工仕様なので、もちろん絶縁ブーム&絶縁バケットです。
4.日野『デュトロ』橋梁点検仕様
デュトロ(小型高所作業車)
- 架装メーカー・型式
- タダノ・BT-100
- 作業床の最大の高さ
- 6.6m
- 作業床の最大の地下深さ
- 5.9m
- 作業装置の種類
- 混合ブーム型
- 作業床の積載荷重
- 200kg
希少な橋梁仕様!
インターホン・首振り機能付き6速MT車!!
こちらは橋の下の点検や高架道路の建設時には欠かせない、橋梁(きょうりょう)点検車。
中古市場に格安で出品されることは珍しい、貴重な車両です。
深い垂直移動で、桁厚の橋梁作業もスムーズに進められます。
高速道路の防音壁の乗り換えもラクに対応できる1台です!
中古の高所作業車がセール価格!
■高所作業車の価格(費用)[新車・中古・レンタル]
モータージャーナリストを生業にしていると、「トラックっていくらで買えるの?」とよく聞かれますが、仕様によって異なるので一概には言えません。
もちろん高所作業車も例外ではないのです。
ただトラック式の新車を例に出すなら、1,000万円超えも珍しくないことは確かでしょう。
一方で、中古車両の購入価格はグンと下がって100万円程度から登場します。
ごく一時的な利用であれば、レンタルを視野に入れても良いかもしれません。
レンタリースの費用は1日あたり20万円前後です。
使用頻度によっては中古購入が一番割安かもしれませんが、購入の際は販売スタッフと話し合って、よくよくご検討ください!
■高所作業車の2大事故予防策[逸走事故・転倒事故]
昨今の高所作業車は、作業者が危険な状況に陥りそうになったら自動停止機能が発動するなどの制御技術が導入されています。
それでも、実際の現場では事故をゼロにすることはできません。
1年に5~6件は死亡事故も発生する業界です。
そこで、最大の事故予防策である安全作業の基本ノウハウと事故例の知識をここでお伝えしていきます。
取り上げる事故例は、発生率の高さから危険度1位と言われている逸走(いっそう)事故と2位の転倒事故です。
1位:逸走事故
最大の危険予防策として、アウトリガー操作の注意点を『アイチ研修センター』よりご指導いただきました。
傾斜地(坂道)では取り扱いに注意しないと、車両が坂道からずり落ちる逸走事故を招きます。
できるだけ地盤のしっかりした平地に固定するのが基本ですが、作業の都合から傾斜地で使用することもあるでしょう。
そんな時は、最大の注意をはらってください。
▲こちらは7度の傾斜地で行われた、逸走体感の実演現場。
やはり坂道は安定性に欠ける!
まず、前上りの駐車は危険なので必ず前下がり(車両前方が坂下側)に駐車することを忘れずに。
次に、駐車ブレーキと車輪止めを確実に行うことが重要です。車両をジャッキアップするときは前輪のアウトリガーから行い、後輪を最後に上げましょう。
▲正しいアウトリガー操作
傾斜地で後ろからジャッキアップすると、後輪が地面から離れた途端に車両が坂を下り始めてしまいます。
これは駐車ブレーキが後輪にしか効いていないからです。
筆者は、アイチ研修センター実技講習場でそんな失敗例の実演を見させてもらいました。すると、ジャッキアップと同時に車両が動き始め、人力では止められない危険を痛感したのです。
こんなトラブルを防ぐには、アウトリガー操作の正しい手順を守ること。ジャッキアップは前方から行い、ジャッキを格納するときは後ろから操作しましょう!
逸走事故予防策まとめ
- ・車両は前下がり(車両前方が坂下側)に駐車する
- ・ジャッキアップは、前方アウトリガーから行う
- ・ジャッキの格納は、後方アウトリガーから行う
2位:転倒事故
もうひとつ作業現場で多いトラブルは、軟弱地盤で養生が不十分のためにアウトリガーが地面に潜り込むケースです。
▲地盤が悪い場所でジャッキベースもないと、アウトリガーが不安定になる
仮に3〜4cm陥没しただけでも、高く伸ばした作業床は非常に大きく揺れますから、作業員には危険が及びます。
▲高所にいるほど、揺れは大きく感じる
安全帯の装着で落下こそ防げますが、作業床内で転倒および壁面や建物等に激突するリスクは回避できません。
安心して作業するためには、教習所や研修センターで習う基本的な扱い方を遵守することです。
さらに言えば、適切な作業計画書のもとに作業指揮者や監督に従い操作すること。それがあなたを守る安全策です!
転倒事故予防策まとめ
- ・地盤が緩いところでは、必ずジャッキベースを使う
■高所作業車まとめ
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今回はアイチ研修センターさんに色々と教えていただき、勉強になりましたねー!
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埼玉県が本社なのに、アイチ(愛知)という社名は不思議トラー!
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昭和37年に愛知県名古屋市で設立したのが、アイチグループの始まりだからじゃよ
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今は全国に展開しているんだから、すごいですよねぇ
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トラック王国も、姫がどんどん大きくするトラ〜!
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なんの! ワシの目が黒いうちは、まだまだワシがトラック王国を切り盛りするぞ!!
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