「2024年問題」は続いている――2026年、トラック事業者が本当に取り組むべきこと

※本記事は2026年4月時点で確認できる公的情報をもとに作成しています。個別の法的判断や届出要否は、所管官庁、業界団体、社会保険労務士、弁護士等にご確認ください。

2024年4月から、トラックドライバーにも時間外労働の上限規制が適用され、あわせて改善基準告示も見直し後の内容が適用されています。「2024年問題」は、制度が始まって終わりではありません。配車、労務管理、運賃交渉、荷待ち時間の削減など、日々の運行実務にどう落とし込むかが引き続き問われています。

さらに、2026年4月以降は、改正物流効率化法への対応が重要になります。一定規模以上の荷主・物流事業者は「特定事業者」として指定され、中長期計画の作成や定期報告などが求められます。特定荷主・特定連鎖化事業者では、物流統括管理者(CLO:Chief Logistics Officer)の選任も必要になります。

つまり、2026年のポイントは「次々と新しい義務が増える」というより、2024年問題への対応と、改正物流効率化法への対応を一体で進めることです。

2024年問題は、労務管理の実務課題として続いている

2024年4月から、自動車運転の業務にも時間外労働の上限規制が適用されました。特別条項付き36協定を締結する場合でも、年間の時間外労働は960時間以内とされています。

また、トラック運転者の改善基準告示も見直されています。主なポイントは、拘束時間、休息期間、運転時間、連続運転時間などの管理です。たとえば、1日の拘束時間は原則13時間以内、延長する場合でも15時間以内が基本です。1日の休息期間は、勤務終了後に継続11時間以上を与えるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回ってはならないとされています。

2026年時点で重要なのは、2024年から始まったルールを、運行計画や勤怠管理の中で確実に運用することです。

実務で確認したいこと

  • 時間外労働が年960時間の範囲に収まっているか
  • 拘束時間、休息期間、連続運転時間を確認できる記録が残っているか
  • 長距離運行や早朝・深夜対応の組み方に無理がないか
  • 荷待ちや手荷役が、拘束時間を圧迫していないか
  • 運賃、待機料、荷役作業料を荷主と協議できているか

ただし、労務管理の見直しは、運送会社だけで完結するものではありません。荷主や元請けが、納品時間、荷待ち、荷役作業、発注リードタイムなどを見直さなければ、ドライバーの労働時間短縮は進みません。

2026年4月以降は、改正物流効率化法への対応が重要になる

改正物流効率化法では、すべての荷主・物流事業者に対して、物流効率化に向けた努力義務が課されています。さらに、一定規模以上の事業者は「特定事業者」として指定され、中長期計画の作成や定期報告などが必要になります。

公表されている主な指定基準は、以下のとおりです。

区分 指定基準の目安
特定荷主・特定連鎖化事業者 取扱貨物の重量 9万トン以上
特定貨物自動車運送事業者等 保有車両台数 150台以上
特定倉庫業者 貨物の保管量 70万トン以上

※指定基準の詳細は、国土交通省「特定事業者の指定」ページをご確認ください。

基準に該当する事業者は、前年度の実績をもとに届出が必要になります。届出後に特定事業者として指定されると、中長期計画の作成や定期報告などの対応が求められます。

特定事業者に求められる主な対応

  • 中長期計画の作成
  • 定期報告
  • 荷待ち時間・荷役等時間などの把握
  • 判断基準に沿った取組状況の確認
  • 特定荷主・特定連鎖化事業者の場合は、物流統括管理者(CLO)の選任

特にCLOは、単なる物流担当者ではなく、事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者から選任することが想定されています。物流部門だけでなく、調達、生産、販売、在庫、経営管理などを含めて、社内横断で物流改善を進める役割です。

荷待ち・荷役時間の把握が、制度対応の入口になる

改正物流効率化法で重視されるのは、物流全体の効率化です。トラック運送の現場では、特に次の3点が重要になります。

積載効率の向上

空車回送を減らす、混載や共同配送を検討する、帰り荷を確保するなど、限られた車両と人員を有効に使う取組です。

荷待ち時間の短縮

バース予約、納品時間の平準化、受付・検品作業の見直しなどにより、ドライバーが現地で待つ時間を減らす取組です。

「荷待ち時間」は、荷主や施設管理者などの都合により、貨物の受渡しのために待機した時間として整理されています。到着時刻の指示がある場合とない場合で算定方法が異なるため、現場ごとの運用を確認しておく必要があります。

荷役等時間の短縮

荷積み、荷卸し、検品、搬出・搬入、仕分け、ラベル貼りなど、運転業務に附帯する作業時間を短縮する取組です。パレット化、フォークリフト利用、手荷役の削減、附帯作業の範囲の明確化が重要になります。

これらは、運送事業者だけで解決できるものではありません。発荷主、着荷主、元請け、倉庫、運送事業者が協力して、待機時間や作業時間を記録し、改善策を検討する必要があります。

荷主・元請けとの関係は「お願い」から「仕組みづくり」へ

トラック業界では、長時間労働や低賃金の背景として、荷主・元請けとの取引慣行も課題とされてきました。

国土交通省は、トラック・物流Gメンによる荷主・元請事業者への監視や是正指導を進めています。長時間の荷待ち、契約にない附帯作業、著しく低い運賃など、取引適正化を妨げる行為への対応は、今後も重要なテーマです。

また、国土交通省の「標準的な運賃」は、トラック運送事業者が法令を守りながら持続的に事業を行うための参考となる運賃として示されているものです。「必ずこの金額で契約しなければならない」という意味ではありませんが、運賃交渉の根拠として活用しやすい資料です。

交渉前に整理したい項目

  • 基本運賃
  • 燃料サーチャージ
  • 待機料
  • 荷役作業料
  • 高速道路料金
  • 附帯作業の範囲
  • キャンセルや再配達時の扱い
  • 荷待ち時間の記録方法
  • 受付、検品、パレット回収などの作業分担

これからは「なんとなく現場で対応する」のではなく、どの作業を誰が行い、どの時間をどう記録し、どの費用をどちらが負担するのかを、契約と運用の両面で明確にすることが重要です。

デジタコ・点呼・運行管理システムは、実務強化の手段として捉える

一定の事業用トラックでは、運行記録計による記録が必要です。運行記録計は、アナログ式(アナタコ)でも、デジタル式(デジタコ)でも対応可能とされています。現時点では、必要な運行記録を確実に残し、労務管理や安全管理に活用することが重要です。

デジタコやクラウド型運行管理システムを使うと、次のような改善につながります。

  • 運転時間、休憩時間、拘束時間を確認しやすい
  • 運転日報の作成負担を減らしやすい
  • 急加速、急減速などの運転傾向を把握しやすい
  • 荷待ち時間や走行実績を、荷主との協議材料にしやすい
  • 労務管理・安全管理の説明資料を残しやすい

遠隔点呼や自動点呼についても、国土交通省の制度に基づき、認定機器や一定の条件のもとで活用が進んでいます。人手不足や拠点分散に対応するための選択肢として、導入可否を検討する価値があります。

環境対応は、補助・支援・取引要請の文脈で考える

脱炭素化は、トラック業界にとっても避けて通れないテーマです。EVトラック、FCVトラック、充電設備、モーダルシフト、共同配送などは、今後も政策的に推進される領域です。

現実的には、次の観点で検討するのがよいでしょう。

  • 自社の運行距離や積載条件にEV・FCVが合うか
  • 車両価格、補助金、充電設備費用を含めた総コストはどうか
  • 荷主から環境対応を求められる可能性があるか
  • 地場配送や短距離輸送から導入できるか
  • モーダルシフトや共同配送で、走行距離や空車回送を減らせるか

環境対応は、燃料費、荷主評価、採用、補助金活用にも関わるテーマです。導入支援が進んでいる領域であり、自社の状況に応じて段階的な検討が重要性を増しています。

自動運転・先進安全技術は、実証と段階的な普及のテーマ

自動運転トラックや先進安全技術も、今後の物流を変える重要なテーマです。制度整備や実証は進んでいますが、現時点ですべてのトラック事業者に直ちに義務がかかる話ではありません。

現実的な対応としては、次のような安全投資を検討することが重要です。

  • 衝突被害軽減ブレーキ搭載車両の導入
  • ドライブレコーダーの活用
  • デジタコによる安全運転指導
  • 居眠り・脇見・疲労状態を検知する機器の活用
  • 遠隔点呼・自動点呼の導入検討
  • 安全教育の定期実施

自動運転や先進安全技術は、すぐにドライバー不足を解消する万能策ではありません。しかし、中長期的には、事故防止、運転負荷の軽減、幹線輸送の効率化に関わる重要な分野です。

事業者が今から準備したいこと

1. 自社が特定事業者に該当するか確認する

保有車両台数、取扱貨物量、倉庫保管量などを確認し、自社が特定事業者の指定基準に該当するかを把握します。グループ会社や複数拠点での集計方法については、必要に応じて所管窓口に確認してください。

2. 荷待ち・荷役時間を記録する

荷主との交渉には、実態データが不可欠です。どの荷主、どの拠点、どの時間帯で待機が発生しているのか、手荷役や附帯作業がどの程度発生しているのかを記録します。

3. 労務管理の運用を見直す

時間外労働、拘束時間、休息期間、連続運転時間を、後から説明できる形で管理します。紙やExcelで管理している場合でも、制度に対応できるかを点検し、必要に応じて運行管理システムや勤怠管理システムの導入を検討します。

4. 荷主・元請けとの契約内容を見直す

運賃、待機料、荷役作業料、燃料サーチャージ、キャンセル時の扱いなどを確認します。契約書や見積書に明記されていない附帯作業がある場合は、内容と費用負担を整理する必要があります。

5. 補助金・支援制度を確認する

デジタコ、ドラレコ、遠隔点呼・自動点呼、EV・FCV、充電設備、省人化設備などは、年度によって補助制度の対象になる場合があります。導入前に、国、自治体、業界団体の支援制度を確認しましょう。

まとめ

2026年のトラック業界で最も重要なのは、「新しい規制が次々に来る」という見方ではなく、2024年問題への実務対応と、改正物流効率化法への対応を一体で進めることです。

ドライバーの労働時間を守るには、運送会社だけの努力では限界があります。荷待ち時間の削減、荷役作業の見直し、積載効率の向上、適正な運賃・料金の収受など、荷主、元請け、倉庫、運送会社が協力して取り組む必要があります。

デジタル化、環境対応、自動運転、先進安全技術については、すべてを「義務化」と捉えるのではなく、自社の課題に応じて段階的に活用していくことが現実的です。

まずは、①自社が特定事業者に該当するか、②労務管理が2024年以降の基準に対応できているか、③荷待ち・荷役時間を記録できているか、この3点を確認することから始めましょう。制度対応を単なる負担で終わらせず、荷主との関係改善、採用力の向上、安全管理の強化につなげることが、これからのトラック事業者に求められる実務対応です。


参考情報

※本記事は2026年4月時点で確認できる公的情報をもとに作成しています。個別の法的判断や届出要否は、所管官庁、業界団体、社会保険労務士、弁護士等にご確認ください。

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